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星・雪・きらめき 緑の里 なよろ

SL排雪列車「キマロキ」編成

全国で名寄だけにしかないSL排雪列車「キマロキ」

SL排雪列車キマロキの写真
北海道の開拓が始まり、明治33年には名寄にも開拓の鍬が入れられ、明治36年9月3日に現在の宗谷本線が名寄まで開通しました。そして、機関区をはじめ保線区や車掌区、電務区などの関係機関が次つぎと開設されました。名寄市は鉄道の発達とともに歩んできたまちで、宗谷本線と、今は廃線となった名寄本線・深名線の分岐点として、道北の交通、文化、産業の中心都市として発展を続けてきました。
時代の移り変わりとともに、昭和50年の12月で全国からSLの姿が消えましたが、名寄に配置されていて、道北の厳しい寒さと風雪を克服して活躍してきたSLを、国鉄当局(現在のJR)から、当時の排雪列車編成のまま貸与を受けることができました。
昭和51年10月末に、その雄姿を再現して名寄公園の高台に展示保存をし、市民をはじめ広く皆様に親しまれてきました。その後、平成元年4月に名寄本線が廃線となり、その跡地を含めた地区に博物館の建設計画が進められました。これに合わせて平成5年6月に、博物館前の旧名寄本線の線路上に移設展示をし、すぐ近くの宗谷本線を走る列車の中からでも、見ることができるようになりました。
新型の特急列車が走る時代ですが、全国で名寄だけにしかないこのSL排雪列車「キマロキ」を、市民の大切な財産の誇りとして、また、名寄市のシンボルの一つとして、末永く保存するものです。

キマロキ編成のあらまし

展示場所…名寄市北国博物館前(旧国鉄名寄本線の軌道上)
  • イラスト キマロキの挿絵

    鮫島惇一郎氏画
    車両編成全長:約75メートル

「キマロキ」編成とは、機関車の(キ)、マックレー車の(マ)、ロータリー車の(ロ)、機関車の(キ)の順に連結された、排雪用編成列車のかしら文字をとって、名づけられたものです。
雪の多い北海道や東北・北陸地方では、普通はラッセル式という逆V字型の羽根で、雪を両側にはねて線路の除雪をしますが、だんだんレールの両側に高い雪の壁ができて、ラッセル式では除雪が困難となり、列車の運行に支障をきたすようになります。そのような状態になったとき「キマロキ」編成の排雪用列車を出動させました。
これには、機関区員や保線区員など数十名が分乗し、一致協力のもとに作業に当たりました。先頭の機関車が両側の雪の壁をくずしてかき集めるマックレー車を引き、その集めた雪を、ロータリー車が回転する羽根で遠くへ吹き飛ばし、そのロータリー車を、機関車が後押しをするという一連の作業できれいに除排雪をしたのです。
「キマロキ」は1回出動すると1週間から10日くらい運転をしましたが、少しでも早く、不通となっている列車の運行をはかるため、厚く固い雪の壁との戦いは大変なものでした。
その当時は、冬の道路の除雪が行われていなかったり、道路の状態も悪く自動車も少なかったので、生活の足は鉄道に頼っている時代ですから、この偉大な機械力に、鉄道関係者にはもちろん、沿線住民の信頼を受け、賞賛されていたものです。

SL59601号機 (蒸気機関車)

SL59601号機のイラスト
  • 製造:大正10年11月3日、川崎造船所
  • 配置
    • 大正10年12月28日…富良野機関区
    • 大正11年10月23日…名寄機関区
  • 退任:昭和47年10月26日 約51年間運転
  • 全長:16.751メートル
  • 高さ:3.813メートル
  • 自重:69.34トン
  • 整備重量:94.85トン
  • 動輪直径:1,250ミリメートル
  • 最大牽引力:800トン(1,000馬力)
  • 最高速度:65キロメートル
  • 走行粁数:2,608,745キロメートル
    • 地球を約65周、稚内から鹿児島間を約3,082キロメートルとして約423往復の距離を走行した。
形式9600型蒸気機関車は大正2年から製造され、内容・外観ともに、大正時代における日本の代表的貨物用の機関車であった。
D51型が普及する昭和16年までに784輌が製造され、「キュウロク」96の愛称で知られており、特に勾配線に威力を発揮し雪にも強かった。
この機関車は501番目に製造され、名寄機関区に配置されてから退任するまで、実に50年間名寄機関区を拠点として活躍したもので、名寄機関区に勤務した機関士や整備関係者に愛されて、良く働いた機関車である。

マックレー車 キ911号機 (かき寄せ式雪かき車)

マックレー車のイラスト
  • 製造:昭和13年10月20日 国鉄苗穂工場
  • 配置
    • 昭和15年1月1日…岩見沢客貨車区
    • 昭和15年1月19日…深川客貨車区
  • 改造:昭和36年、国鉄旭川工場
  • 配置:昭和38年5月31日 名寄客貨車区
  • 退任:昭和50年10月18日 約36年間運転
  • 全長:8.470メートル
  • 車体を最長に延ばした場合:11.198メートル
  • 自重:24.50メートル
  • 高さ:3.990メートル
  • 雪の最大かき寄せ巾:7.750メートル
  • 走行粁数:27,560キロメートル
  • 運転線区:函館、宗谷、留萌、札沼、富良野、石北、天北、名寄、深名の各線。
除雪車は、創業以来ラッセル式の単純な構造のものが多かったが、大正12年に回転式(ロータリー)の雪かき車、大正15年には幅広式(ジョルダン)の雪かき車がいずれもアメリカから輸入された。
かき寄せ式(マックレー)の雪かき車は、国産として初めて苗穂工場で製作に成功したもので、回転式の雪かき車と組み合わせて、画期的な除雪方式として世界的にも有名になった。

ロータリー車 キ604号機 (回転式雪かき車)

ロータリー車のイラスト
  • 製造:昭和14年11月20日 国鉄苗穂工場
  • 配置
    • 昭和15年1月1日…岩見沢機関区
    • 昭和15年1月19日…深川機関区
    • 昭和38年5月31日…名寄機関区
  • 退任:昭和50年10月18日 約36年間運転
  • 全長:19.025メートル
  • 高さ:4.080メートル
  • 自重:84.50トン
  • 整備重量:115.00トン
  • 雪を飛ばす距離:横に30メートル位、上に20メートル位
  • 羽根の回転数:毎分70から80回転
  • 走行粁数:26,762キロメートル
  • 運転線区:函館、宗谷、留萌、札沼、富良野、石北、天北、名寄、深名の各線。
回転式雪かき車として、国鉄苗穂工場で製作に成功したもので、かき寄せ式雪かき車と組み合わせて、画期的な除雪方式として世界的にも有名になったものである。豪雪地帯であるこの地方での活躍は勇壮そのものであり、今なお、その雄姿がしのばれる。
前部の羽根を回転させて雪を飛ばす動力は、搭載してある機関車用ボイラーの蒸気であるが、自走できないので、機関車に後押しをしてもらうことになる。「キマロキ」編成は、札幌鉄道局苗穂工場の工作課長であった羽島金三郎氏が大正15年に欧米の除雪車を視察研究し、昭和3年にマックレー車の製作に成功し、ロータリー車と組み合わせた、画期的な除雪方式として開発したものである。

SL D51398号機 (蒸気機関車)

SL D51398号機のイラスト
  • 製造:昭和15年1月24日 日本車輌製作所
  • 配置
    • 昭和15年2月9日…岩見沢機関区
    • 昭和18年9月8日…追分機関区
    • 昭和22年10月1日…旭川機関区
    • 昭和44年10月4日…北見機関区
    • 昭和47年3月15日…名寄機関区
  • 退任:昭和48年9月10日 約34年間運転
  • 全長:19.730メートル
  • 高さ:3.980メートル
  • 自重:90.50トン
  • 整備重量:125.10トン
  • 動輪直径:1,400ミリメートル
  • 最大牽引力:1,200トン(1,500馬力)
  • 最高速度:85.00キロメートル
  • 走行粁数:2,372,301キロメートル
    • 地球を約60周、稚内から鹿児島間を約3,082キロメートルとして約385往復の距離を走行した
形式D51型は、9600型に代わる大型強力貨物用機関車として、近代装置と新材質を採用して製造された。
日中戦争・太平洋戦争で輸送増強となり、昭和11年から昭和20年までに1,115輌製造され、戦時中、戦後とも大活躍をした機関車である。この機関車は398番目に製造された。
高性能を誇るD51型は、「デゴイチ」の愛称で知られており、世界的にも狭軌鉄道最大の傑作とされている。

車掌車 ヨ4456号車 (緩急車)

車掌車のイラスト
  • 形式:ヨ 3500型
  • 製造:昭和29年 川崎車輌
  • 全長:7.830メートル
  • 高さ:3.735メートル
  • 自重:9.75トン
  • 展示:昭和63年6月16日
貨物列車などの列車運行管理上、車掌専用の車輌として製造され、通常の列車のほか、事故・災害などのときの作業員や行員などの輸送に対応した。車掌車は性質上、一般的に「緩急車」と呼ばれ、後年に、排雪用列車にも車掌車が連結され、監督員や作業補助員が添乗して運行されていた。
昭和51年に国鉄から「キマロキ」の貸与を受け展示したとき、車掌車はなかったのでこれを連結展示をし、完全な形にしたいと探していた。釧路にあった車掌車を購入して連結展示したもので「キマロキ」保存会の管理棟としても使用している。

キマロキ保存会による現地解説

4月~10月の日曜・祝日13時~15時に、キマロキ保存会の会員がキマロキ列車の解説を現地で行っています。
車両に乗り汽笛を鳴らす体験もできますので、ぜひ遊びに来てください。

お問い合せ・担当窓口

北国博物館